【京都の怪異伝説】あの世とこの世の境とされた3つのスポット|歴史と伝承をひもとく

KYOTREAT編集部

京都には1200年を超える都の歴史の中で生まれた、数々の不思議な伝説や言い伝えが残るスポットがあります。今回ご紹介するのは、いずれも「この世とあの世の境」と信じられてきた場所。平安時代の陰陽師や歌人にまつわる伝承から、地獄の入口とされた寺院まで、京都ならではの怪異譚を、史実の裏付けとともにひもといていきます。

お断り:本記事は歴史・伝承・文化としての紹介を目的としています。夜間の訪問は足元が暗く、私有地や神域への配慮も必要なため、マナーを守った訪問を心がけてください。

目次

■一条戻橋|安倍晴明と渡辺綱の伝説が残る橋


■貴船神社|縁結びの社に伝わる「丑の刻参り」の起源


■六道珍皇寺|小野篁が冥界へ通ったという井戸


■まとめ

■一条戻橋|安倍晴明と渡辺綱の伝説が残る橋

写真:写真AC

京都市上京区、堀川通に架かる小さな橋「一条戻橋」。平安京の北端にあたる一条通は、都と都の外を分ける境界であり、この橋もまた「現世と異界をつなぐ境目」と信じられてきました。

「戻り橋」と呼ばれる由来

もともとは「土御門橋」と呼ばれていたこの橋が「戻橋」と呼ばれるようになったのは、延喜18年(918年)の出来事がきっかけと伝わります。学者・三善清行(みよしのきよゆき)が亡くなり、葬列がこの橋を渡ろうとした際、修行のため死に目に会えなかった息子・浄蔵(じょうぞう)が棺にすがって蘇生を祈ったところ、清行が一時的に息を吹き返したという逸話です。この「死者が現世に戻ってきた」という伝承から、「死者が蘇る橋」として特別な場所と見なされるようになりました。

安倍晴明・渡辺綱との関わり

橋のすぐそばには、平安時代の陰陽師・安倍晴明を祀る「晴明神社」があります。晴明の邸宅があったと伝わるこの地には、晴明が式神(陰陽師が使役する鬼神)を橋の下に潜ませていたという伝説も残っています。晴明の妻が式神の顔を怖がったため、普段は橋の下に隠し、必要なときだけ呼び出して使役していたのだとか。

また、源頼光の四天王の一人・渡辺綱(わたなべのつな)が、この橋の上で鬼女と遭遇し、名刀・髭切(ひげきり)でその腕を切り落としたという伝説も有名です。歌舞伎の演目『渡辺綱と鬼女』の題材にもなっています。

このほか、千利休が切腹させられたのち、その木像がこの橋のたもとにさらされたという逸話も伝わっており、時代を超えて数々の物語の舞台となってきたことがうかがえます。

今に残る風習

「戻る」という言葉が持つイメージから、現在でも縁談や嫁入りの行列、葬式の列はこの橋を渡らないのが習わしとされています。一方で、戦時中には出征する兵士の無事の帰還を願って、この橋を訪れる人々もいたと伝わります。

基本情報

項目詳細
住所京都府京都市上京区一条通堀川西入る(晴明神社から南へ約100m)
見学橋自体は常時見学可能(現在の橋は1995年に架け替えられたもの)
あわせて訪れたい晴明神社(境内に、旧・一条戻橋の欄干を使った再現橋や式神の像がある)
アクセス市バス「一条戻橋・晴明神社前」から徒歩すぐ

■貴船神社|縁結びの社に伝わる「丑の刻参り」の起源

写真:写真AC

京都市左京区、鞍馬の南に鎮座する「貴船神社」は、水を司る神を祀る神社として、古くから雨乞い・雨止めの神事が行われてきた由緒ある社です。全国に約450社あるといわれる貴船神社の総本宮でもあります。創建年代は不詳ですが、社伝によれば、神武天皇の母・玉依姫命(たまよりひめのみこと)が水源を求めてこの地にたどり着き、水の神を祀ったのが始まりとされています。

「恋の宮」としての貴船神社

平安時代の女流歌人・和泉式部が、夫との不仲に悩み貴船神社に参拝して復縁を祈願したところ、願いが叶ったという逸話が残っており、これが「縁結びの神」として信仰される由来となっています。今も多くの参拝者が良縁を願って訪れる、京都屈指のパワースポットです。

丑の刻参りの伝承

一方で貴船の山は、「丑の刻参り(うしのこくまいり)」という呪術の発祥地とも伝えられています。丑の刻(深夜1時〜3時ごろ)に、白装束で藁人形に五寸釘を打ち込み、恨みを持つ相手を呪うというこの風習は、能楽の演目『鉄輪(かなわ)』にも取り入れられ、後世に広く知られるようになりました。あくまで伝説・民間信仰の話であり、現在の貴船神社がこうした行為を認めているわけではありません。神域を荒らす行為は当然ながら固く慎むべきです。

拝観情報

項目詳細
住所京都府京都市左京区鞍馬貴船町180
電話075-741-2016
参拝時間(本宮)6:00〜20:00(12月〜4月は6:00〜18:00)※ライトアップ期間中は延長あり
授与所受付9:00〜17:00
参拝料境内無料
アクセス叡山電鉄「貴船口駅」から京都バス(貴船行き)で約5分、「貴船」下車すぐ
公式サイトhttps://kifunejinja.jp/

貴船は鞍馬山とあわせて自然豊かなエリアで、川床料理でも有名です。日中の参拝であれば全く危険な場所ではなく、京都の奥座敷として多くの観光客に親しまれています。夜間は街灯が少なく山道のため、訪問するなら日没前の明るい時間帯がおすすめです。

■六道珍皇寺|小野篁が冥界へ通ったという井戸

京都市東山区、東山・松原通沿いにある「六道珍皇寺(ろくどうちんのうじ)」。地元では「六道さん」の愛称で親しまれる、臨済宗建仁寺派の寺院です。創建は延暦年間(782〜805年)と伝わり、この一帯はかつて平安京の火葬地「鳥辺野(とりべの)」の入口にあたることから、「現世とあの世の境目=六道の辻」と信じられてきました。「六道」とは仏教における6つの世界(地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天上)のことで、亡くなった人々を弔うための「野辺の送り」が行われた場所として知られています。

小野篁と「冥土通いの井戸」

この寺で特に有名なのが、平安時代の官僚・学者である小野篁(おののたかむら)にまつわる伝説です。篁は昼は朝廷に仕える一方、夜は閻魔大王に仕える冥府の役人だったという奇怪な言い伝えがあり、本堂裏手の庭には、篁が冥界へ通うために使ったとされる「冥土通いの井戸」が今も残っています。2011年には、篁が冥界から帰る際に使ったと伝わる「黄泉がえりの井戸」も隣接する旧境内地から発見されました。

六道まいり

毎年8月7日〜10日には、ご先祖の霊をお迎えする伝統行事「六道まいり」が行われ、多くの参拝者で賑わいます。参拝者は高野槇(こうやまき)を買い求め、迎え鐘を撞いて先祖の精霊を迎えるという、京都のお盆ならではの風習です。

拝観情報

項目詳細
住所京都府京都市東山区小松町595
拝観時間9:00〜16:00
拝観料境内自由(本堂・冥土通いの井戸は特別拝観期間のみ、または事前予約が必要)
アクセス市バス「清水道」から徒歩約5分
公式サイトhttps://www.rokudou.jp/

普段は境内を自由に散策できますが、井戸や本堂内部は寺宝展などの特別公開時のみの公開となっているため、じっくり見学したい場合は公式サイトで特別拝観のスケジュールを確認してから訪れることをおすすめします。清水寺・八坂神社エリアからも徒歩圏内で、東山観光のルートに組み込みやすい立地です。

■まとめ

今回ご紹介した3つのスポットは、いずれも「現世とあの世の境」という共通のテーマを持ちながら、それぞれ異なる時代・人物にまつわる伝説を今に伝えています。一条戻橋の安倍晴明と渡辺綱、貴船神社の和泉式部と丑の刻参り、六道珍皇寺の小野篁――平安京から続く千年を超える都だからこそ、こうした怪異譚が数多く語り継がれてきたのでしょう。

日中に訪れれば、いずれも安全に見学できる観光地です。伝説の背景にある歴史を知ったうえで巡ると、京都の旅がより一層味わい深いものになるはずです。

※本記事の拝観時間・拝観料等の情報は変更される場合があります。訪問前には必ず各施設の公式サイトにて最新情報をご確認ください。