【今年は11月6日】京都人にはお馴染み「亥の子の祝い」に亥の子餅を

KYOTREAT編集部

亥の子の祝い(いのこのいわい)という行事があるのをご存知でしょうか?
亥の月(旧暦10月)、つまり現在の11月の最初の亥の日、亥の時間に行われる収穫祭のことです。
そして、亥が火に強いことから、この日にこたつ開きや炉開きをすると火災を逃れられるとも言われています。

現代の暦では毎年異なり、2022年の「亥の子の祝い」は、11月6日(日)です。
年中行事を大切にする京都では、「亥の子の祝い」が近づくと「亥の子餅」という和菓子が多くの和菓子店で販売されます。今回は、その「亥の子餅」についてご紹介していきましょう。

目次

「亥の子餅」とは?

老舗京菓子店の亥の子餅

・【有職菓子御調進所 老松】

・【御菓子司 かぎ甚】

・【京菓子司 末富】

・【千本玉壽軒】

■まとめ

「亥の子餅」とは?

「亥の子餅」とは、亥の子に際して作られる餅で、11月の最初の亥の日、亥の刻(午後10時頃)に猪のような形の「亥の子餅」を食べると万病除けになると言われています。

もともとは無病息災のまじないとした中国の昔からの言い習わしをもとに、平安時代に宮廷で行われたのが始まりなのだとか。『源氏物語』では、光源氏と紫の上の新婚第二夜の場面で亥の子餅が登場しています。

亥の子餅の作り方には諸説あるものの、その年に取れた新米(餅)に『大豆・小豆・ゴマ・栗・柿・ササゲ・糖』の七つの粉を混ぜ入れ、亥の子の形を象って作られているようです。

しかし、地域や和菓子屋によって使われている材料や製法、デザインが異なり、うり坊のように三本の筋を入れたものなども見かけます。

■老舗京菓子店の亥の子餅

では、京都の老舗和菓子店の亥の子餅をいくつかご紹介していきましょう。

・【有職菓子御調進所 老松】

写真 https://www.instagram.com/oimatsu_kyoto/

老松は、北野天満宮のほど近くにある花街の上七軒(かみしちけん)で、100余年続く京菓子の老舗です。
“有職菓子御調進所”とは、古来より朝廷に伝わる儀式や祭礼の際に使われる菓子を謹製していたことを示しており、現在も文化としての京菓子の普及に努めている菓子司です。

老松の亥の子餅は、比較的濃いブラウンカラーです。
餅生地はやや厚みがあり、うれしいことに粒あんと刻まれた栗が包まれています!少し黄色いものが透けている?と思ったらなんと栗だったのです。
秋の味覚が閉じ込められているなんて思わなかったので、しみじみおいしさに浸ってしまう亥の子餅でした。

店名:有職菓子御調進所 老松 北野店
住所:京都市上京区社家長屋町675-2
TEL:075-463-3050

HP:https://oimatu.co.jp/

・【御菓子司 かぎ甚】

写真 https://www.instagram.com/kagijin/

かぎ甚は、1921年創業。初代 太田太三郎氏が祇園・鍵善良房 番頭職から独立し、京都建仁寺西門近くで「鍵甚良房」を始めました。2019年に鍵甚良房より「かぎ甚」に店名を変更。
伝統的な技術・素材・味と合わせて、時代に沿った新たな発想を取り入れ、菓子作りを行っています。

かぎ甚の亥の子餅には、とてもソフトな羽二重餅がつかわれており、黒胡麻が散りばめられています。餡はこしあんで、干し柿・銀杏も入っていて秋らしさ満点。
お店によって創意工夫がなされているのが亥の子餅なんだなあ。と改めて実感しました。

店名:御菓子司 かぎ甚
住所:京都市東山区大和大路通り四条下る小松町140
TEL:075-561-4180

HP:https://kagijin.jp/

・【京菓子司 末富】

写真 https://www.instagram.com/suetomi.kyoto/

末富は、1893年創業の京菓子司です。末富の初代は、同じ京都の和菓子屋「亀末廣」で修行をし、暖簾分けという形で開業。初代の頃から東本願寺様や裏千家様のご用を務め、大量生産でない心のこもったお菓子を作っています。一方、京菓子作りの感性と現代的な感性を融合させた新しい菓子ブランド「SUETOMI AoQ<青久>」(スエトミアオキュウ)を立ち上げるなど、伝統と革新を併せ持っています。

末富の亥の子餅は、中程度の濃さの茶色をしています。餅生地にも餡を加えているのでこのような色なのだとか。
餅はたいへん柔らかく、しっとりしていて甘みが程よく、こしあんのおいしさをじっくり味わうことができます。

店名:京菓子司 末富 本店
住所:京都市下京区松原通室町東入
TEL:075-351-0808

HP:https://www.kyoto-suetomi.com/

・【千本玉壽軒】

写真 https://www.instagram.com/kyoto.sentama/

織物の街・西陣にある千本玉壽軒のオリジンは織物屋さんです。
江戸時代後期の寛政年間、千本今出川上ル付近に、綴織を織る井筒屋があり、機仕事のかたわら菓子を製造・販売しており、これが好評だったのだとか。

大正の中頃、道路拡張のために江戸時代からの古い店は今出川大宮へ移ったものの、取り壊しを免れた建物の一部で菓子作りを続けていました。

先代が「本家玉壽軒」で修行を積み昭和13年に独立し、かつて本家があった発祥の地で創業したのが「千本玉壽軒」です。
銘菓「西陣風味」は西陣織の美しさをモチーフに考案されたそうで、まさに西陣の歴史に育まれた雅な菓子なのです。

現在は三代目が自然素材を使った昔ながらの製法を受け継ぎながら、現代のニーズに合わせた菓子作りを行っています。

千本玉壽軒の亥の子餅は、粒あん入り。こしあんが使われることの多い亥の子餅が多いなか、
ほどけるように柔らかい餅生地に小豆のダイレクトな風味のコンビネーションが新鮮です。
最後にほのかに黒胡麻の香りが添えられ、素直に美味しいと思えるまとまりがあります。
餅生地に黒胡麻がちりばめられ、胡麻の風味がしっかりしているので小豆の風味が強い粒あんと好相性です。

店名:千本玉壽軒
住所:京都市上京区千本通今出川上ル上善寺町96
TEL:075-461-0796

HP:https://sentama.co.jp/

■まとめ

気になる「亥の子餅」はありましたか? お正月の「花びら餅」や6月末の「水無月」のように、京都の多くの和菓子屋さんにより創意工夫され個性をまとって生み出される珠玉の一品たちです。
毎年異なる亥の子餅を買い求めて、お好みの味わいを見つけてみるのも楽しいですね。