文学の街・京都を歩こう。前編

KYOTREAT編集部

京都といえばどんなものを思いつきますか? 寺社仏閣? 舞妓さん? それともカフェ? パン?

京都って、意外といろんなものがあるまち。あなたの知らない京都を、ご紹介します。

1. 佐々木酒造と川端康成

佐々木酒造さん、といえば俳優の佐々木蔵之介さんが有名ですが、実は文豪・川端康成が誉めたお酒があるということをご存知ですか? 川端康成といえば「雪国」が有名ですが、京都を題材にした「古都」も有名です。

その「古都」の名前を冠した日本酒・「古都」。川端康成は美食家としても知られているのですが、その川端をもって「これこそ京都の味である」といわしめたのがこの「古都」です。

ラベルの文字はお酒に感動した川端康成直筆のものを使用しているのだとか。しかしどうして佐々木酒造さんのお酒はそんなにも美味しいのでしょうか? その理由は水にありました。

2.京都の水と京都のお酒の関係性

元々京都は地下水が豊富で、本来は今の上京区や中京区などにたくさん酒造がありました。今伏見区にあるキンシ正宗も、もとは中京区が発祥の地。佐々木酒造のある付近には「出水」という地名が残っています。そもそも平安京の中心部は現在の佐々木酒造のあたりでした。また佐々木酒造のさらに北あたりから佐々木酒造にかけて、西陣という地名です。鮮やかな色彩が特徴の西陣織で有名ですが、染め物にも水が必要です。

そして京都の水は安土桃山時代、千利休がお茶を点てるために愛した水と呼ばれています。市内にあるいくつかの井戸に千利休伝説があるほど。お茶に利用する水はミネラル分が少なくまろやかなものが好まれます。

実はこの水は関西のもうひとつの酒どころである兵庫県・灘の水とは全く逆の特徴。ミネラル分が多い水で作ったお酒は旨味も強いですが雑味も含んでしまいます。全体的に味が強いお酒になり、古くは「男酒」と呼ばれていました。

和歌の表現で「ますらをぶり」という言葉がありますが、似たイメージです。どちらかというと荒々しく力強いお酒の味と考えてください。

一方、伏見を含む京都のお酒は基本的に「女酒」と呼ばれます。これは味わいが淡麗であることの表現。兵庫・灘のお酒よりも味は薄いのですが、むしろ京都を代表する宮廷料理・有職料理などの淡い味付けを指します。

和歌表現でいうと「たをやめぶり」と似たイメージ、繊細で優美なお酒の味わいです。

その中でも特に佐々木酒造さんの使う水は「銀明水」といって特に千利休が好んだ水。その時代に好まれた水で作るお酒は、昭和の大文豪をも唸らせたのです。

3.佐々木酒造さんと京都の歴史

ちなみに佐々木酒造本店では佐々木酒造さんで扱うお酒がほとんど全て買えます。流石に夏のお酒を冬に買うことはできないのですが、コラボ商品やオリジナル甘酒も販売しています。オリジナル甘酒の名前はその名も「銀名水」! 利休の愛した水と同じ名前をもつものです。

もちろん川端康成の愛した「古都」も買えますよ。さらに運が良ければ、酒造の猫社員に会えるかも。

一度訪れてみるのはいかがでしょうか?