【京都で年に数日だけ?!】秋は特別公開に足を運んでみよう

KYOTREAT編集部

京都では、春と秋の年2回、文化財の特別公開が行われるのをご存じですか?
正式名称を「京都非公開文化財特別公開」と言い、昭和40年にスタートした文化財愛護の普及啓発事業です。
文化財を公開することにより、文化財への関心を高めてほしいという想いから、社寺や文化財所有者の協力のもと実施され、今年で58回目となります。

今回は、先日訪れた2ケ所の特別公開についてご紹介します♪

冷泉家住宅

始めにご紹介するのは「冷泉家住宅」です。
京都御苑のすぐ北側にあり、1790年に再建されました。通常は非公開なのですが、毎年数日間特別公開されます。

「冷泉家」は、「古今集」の選者で、平安時代後期から鎌倉時代に活躍した歌人である藤原俊成(しゅんぜい)、定家(ていか)父子という歌人を祖先に持ち、歌学をもって朝廷に仕えました。
俊成・定家といえば、百人一首でもよく知られる歌人ですよね。

明治維新ののち、ほとんどの公家が東京に居を移したのですが、膨大な典籍類を御文庫に保存している冷泉家は、殿掌(京都御所の保存および諸般の事務をつかさどった職員)として留守をあずかったことにもより京都に残りました。その結果最後の公家屋敷として現存し続け、完全な姿で現存する唯一の公家屋敷となり、重要文化財に指定されています。

門をくぐった後は撮影禁止なので、内部の写真はないのですが、台所→表門→玄関→座敷棟→御文庫 の順に見て回り、各所で大学生の方が解説をしてくださいました。

台所の土間の上に大きな藁(わら)の束が飾られていました。

これは赤熊(しゃぐま)と言って、祇園祭の山鉾巡行の際に長刀鉾の鉾の上部に取り付けてある藁で出来た飾り物なのだとか。
いつの頃からか毎年長刀鉾の赤熊が巡行の終わった後に届けられ、魔よけとして土間の壁に飾っているそうです。

座敷棟で驚いたのは、壁紙がシンプルだったことゴールドベースに薄―い同系色で唐草の模様が入っていました。実はそれには理由があります。

歌会などで和歌を詠む際、壁紙の季節性や主張があるモチーフが視界に入ってくると、歌の邪魔になるからなのだとか。何事も歌を中心に考えられているのだなと実感しました。

写真 https://reizeike.jp/

そして圧巻だったのが、北の大蔵を始めとする収蔵庫です。
和歌に関する収蔵品が多くあり、国宝5件、重要文化財48件、点数にして1300点を含む数万点を収蔵!

藤原定家の筆による『古今和歌集』や『明月記』など、教科書で紹介されているような著名な資料もあるとのこと。まさに日本の宝ですね。

日頃、忙しい生活を送る現代人が、日本文化の原点ともいえる、公家文化に触れることのできる貴重な文化財と言えます。
冷泉家住宅の公開は例年数日間しかないので、2022年は終了していますが、来年以降是非お訪ねになってみてください。

施設名:冷泉家住宅
住所:京都府京都市上京区玄武町599
TEL:075-241-4322

HP:https://reizeike.jp/

聖護院門跡

もう1ケ所足をのばしたのは、「聖護院門跡」。特別公開中は、約40分間のツアーガイドに参加することができます。

聖護院門跡は、京都市左京区にある本山修験宗総本山の寺院です。
滋賀県にある三井寺の僧 増誉が、白河上皇の熊野御幸の先達として案内役に任命され、その功績が讃えられ現在の聖護院一帯の土地を拝領すると共に熊野三山検校職、修験者の統括を命じられました。そして寛治四年(1090)に「聖を護った寺」としてこの地に聖護院を創建しました。
修験道の寺・山伏の寺で、修験道に関係する仏様が多く祀られているのだとか。

1872年(明治5年)の修験道廃止令発布後、一時天台寺門宗に属しましたが、1946年(昭和21年)に修験宗(のち本山修験宗)として再び独立し、現在に至っています。

また、後白河天皇の子である静恵法親王が宮門跡として入寺以降、 代々法親王が入寺し、門跡寺院として高い格式を誇ってきました。
江戸時代後期には二度仮皇居となるなど、皇室との深い関わりがあり、「聖護院旧仮皇居」として国の史跡に指定されています。

本尊は「不動明王」(重要文化財)で、平安後期に作られたのち聖護院の数度の火災を免れ、守られてきたものです。
(写真撮影は不可でした)

不動明王とは、仏教の信仰対象である五大明王の中心となる明王で「お不動さん」とも呼ばれます。
真言宗をはじめ、天台宗、禅宗、日蓮宗等の日本仏教の諸派および修験道で幅広く信仰されています。
胸を張り堂々と睨みを効かしたその姿の麗しいこと!

そして、たいていの不動明王は2体の童子を従えているのだそうです。
向かって右には仏法に対して恭敬で、蓮華冠をつけ天衣と袈裟を身に着けている矜羯羅童子(こんがらどうじ)がいます。向かって左には性悪をあらわすものとされており袈裟は着けず、天衣のみを頸と肩に無造作に巻きつけている制吒迦童子(せいたかどうじ)を従えています。

加えて、廃仏毀釈の際には廃寺となった末寺から本尊を預かったため、現在も多くの不動明王像が安置されているそうです。こういったことも、ガイドの方から詳しく教えていただけるのが、ガイドツアーそして特別公開の醍醐味ですよね。

また、狩野派による豪華絢爛な障壁画も聖護院の見どころです。
宸殿には狩野山雪の子、狩野永納と、狩野探幽の養子、狩野益信による金碧障壁画100余面が納められています。

そして、光格天皇が仮御所として使用した上段の間はまさに時代劇の世界。
タイムスリップしたような気分が味わえました。

ガイドの方のお話をうかがうことで、今まで知っていた情報や知識が頭の中でつながり、「なるほど~!」となること複数回。本当に良い機会をいただきました。

施設名:聖護院門跡
住所:京都市左京区聖護院中町15
TEL:075-771-1880

HP:https://www.shogoin.or.jp/

聖護院エリアのおいしいもの①

知識欲を満たした後は美味しいランチをいただきに、聖護院門跡から徒歩数分の場所にある「肉専科はふう 聖護院」さんへ。御所南にあるはふうさんの支店で、度々テレビ等でも紹介されている人気洋食店です。

もともとはお肉屋さんとして営業されていただけあり、お肉のクオリティは折り紙付き。
オ―ダーしたのはやっぱり「ビフカツ」!
中はレアで、おはしで切れるほど超やわらかなんです。口にいれるとジューシーな肉の旨みが口中に広がります。
周りの衣はサックサクで、デミグラスソースのコクの深さといったら!

至福の美味しさでした♪

施設名:肉専科はふう 聖護院
住所:京都市左京区聖護院山王町8
TEL:075-708-8270

HP:http://hafuu.com/

聖護院エリアのおいしいもの②

次に向かったのは、「聖護院八ッ橋 本店」です。

写真 https://shogoin.co.jp/

「聖護院八ッ橋」と言えば、創業1689年。300年あまりの歴史あるお店です。
京都駅などで生八ッ橋を購入したことはありましたが、本店に初めて足を踏み入れました。
暖簾がザ・老舗な雰囲気を醸し出しています。

栗を使った秋の限定商品などが並ぶなか、今回いただいたのは「カネール」。

「カネール」とは、フランス語で肉桂(ニッキ)を意味するそうです。
薄く焼き上げられた八ッ橋が細~く巻かれています。
パリパリと薄いので歯ごたえが心地良く、一般的な八ッ橋よりもとっても食べやすく、子供たちも大好きなお菓子です。ニッキ味のほかコーヒー味もあります。
軽くてお値段も手ごろでパッケージも可愛いので、京都土産にもおすすめですよ。

施設名:聖護院八ッ橋 本店
住所:京都市左京区聖護院山王町6
TEL:075-752-1234

HP:https://shogoin.co.jp/

聖護院エリアのおいしいもの③

最後に立ち寄ったのは、「ラ ヴァチュール」です。
日本一有名なタルトタタンのお店と言っても過言ではないでしょう。
先代オーナーの松永ユリさんは、フランスで食べたタルトタタンの味を再現された、日本のタルトタタン界の先駆者。オープン以降50年近くも、全国のたくさんのファンに愛され続け、現在はお孫さんがその味を継承されています。

店内は「パリに憧れた古き良き時代の日本」をイメージしているそうで、落ち着いた雰囲気。
イートインもできますが、今回はテイクアウトにしました。

こちらがそのタルトタタン。

タルトタタンは19世紀後半のフランスで生まれたお菓子。
ホテルを営んでいたタタン姉妹が、りんごのタルトを作る時にタルト生地を忘れてしまい、りんご・バター・砂糖だけで焼いたことが誕生のきっかけ。タルトタタンとは、「タタン姉妹によって作られたタルト」のことだったのですね。

こちらのタルトタタンは、1ホールあたり約20個ものりんごが使われているそうです。
4時間以上かけてじっくりキャラメリゼされており、りんごの甘味と酸味に濃厚さが加わった奥深い味わい!
他のお店とは一線を画す美味しさです♪

イートインの場合はヨーグルトソースが添えられますが、テイクアウトした場合は、プレーンヨーグルトと合わせていただくのもおすすめです。

そして、一緒にテイクアウトした「くるみタルト」も、実は名品級の美味しさでした。

今回初めていただいてみたのですが、クルミの苦みとキャラメルの濃厚なコクと甘みのバランスが絶妙!
苦みがしっかりとしているので、お子様向きではありませんが、大人向きのコーヒーとの相性抜群の逸品でした。

施設名:ラ ヴァチュール
住所:京都市左京区聖護院円頓美町47-5
TEL:075-751-0591

HP:https://voiture.buyshop.jp/

まとめ

聖護院門跡の特別公開は比較的長く、2022年は12月4日まで開催されています。

また、その他の施設の情報も公式サイト(http://www.kobunka.com/tokubetsu/)で確認することができます。春と秋だけの特別な機会に是非各施設を訪れてみてください!