京料理と言われても、なかなかどのようなものかは想像がつきにくいですよね。
京料理を和食と捉える人も多いと思いますが具体的にはどのような文化があり、魅力や特徴は何が挙げられるのでしょうか。
今回は京料理の魅力と使われる食材について、詳しくご紹介したいと思います。
これを読んで京料理を知ったうえで食べてみれば、また違った味わいになるかもしれません。
目次
■京料理の五体系とは?
■京料理の歴史と特徴
■京料理が発達したのには水が関係する
■京料理で楽しめる京野菜と調味料
■お出汁を手に入れるなら「京都離宮」
■まとめ
■京料理の五体系とは?
京都へやって来ると様々な料理を楽しむことができますよね。
その際に「京料理」という言葉を聞いたことはありませんか?
京料理とは、これまで京都で歴史を重ねた日本料理の五体系のことを指します。
五体系には、以下の5つが挙げられます。
〇大饗料理(だいきょうりょうり)
朝廷にいる貴族たちが天皇に提供するための宴会料理のこと。
見た目が特に重視された料理であり、切り方や寸法、盛り合わせが決まっていることから、見た目が美しいのが特徴。
味付けは、下味がなく醤油や酢、塩などが多くなっています。
これらは中国料理の影響を受けて生まれ、日本で最も古い料理様式になっています。
〇精進料理(しょうじんりょうり)
大饗料理以降に発達した食文化。
殺生ができない宗教で発達したもので、精進料理と呼ばれます。
寺院社会で生まれたことから、野菜が中心に作られます。
宗教的禁忌によってお肉などが使えなかったことから、大豆はお肉の食感を見立て、大豆や小麦粉などで動物性食料の味に近づけたそうです。
また調味料の調合やだしを取るなどといった技術も精進料理から生まれました。
〇本膳料理(ほんぜんりょうり)
見た目が重視される本膳料理。
冠婚葬祭に用いる料理として、目で楽しめる料理です。
〇懐石料理(かいせきりょうり)
茶文化の発達によりおもてなしの料理として生まれた懐石料理。
茶会などで客人をもてなすために提供されます。
〇有職料理(ゆうそくりょうり)
朝廷などで働く人が楽しんだ料理。
大饗料理と本膳料理の影響を受けて発展しました。
これら全ての料理に共通するのは京都の自然で育つ四季折々の京野菜や、昆布とかつお節から取れる「だし」を使い、素材本来の味を活かした料理であるということと、それを美しく盛り付けて配膳することなのです。
■京料理の歴史と特徴
○京料理の歴史
全国でそれぞれの特徴を持った料理がありますが、京都にも理由があり「京料理」という独自の文化が生まれました。
京都は都が置かれていたとき、政治や文化、宗教などの中心的存在でした。
それにより公家や僧侶などの文化も関わりがあったことから、多くのしきたりが料理にも影響を与えました。
奈良時代頃の京都は海産物が豊富とは言えませんでした。
しかし、貴族などは味にこだわりが強かったので京都で採れる魚の干物や野菜や大豆、乾物などといった食材を使って料理が作られていました。
それらの料理は見た目も重視されていたことから、味だけでなく見た人が嬉しい気持ちになるようにと美しい盛り付けが心がけられました。
鎌倉時代になると宋から新たな文化が伝わり、殺生をしない宗教の教えから「精進料理」が生まれます。
これらは植物性食材などの使用とこだわりの調理法によって、味が磨かれていきました。
味噌を使った料理が増えたのは、この頃にすり鉢などの調理器具も発展したからです。
その後戦国時代には茶道が広まったことで、客人をおもてなしする料理として懐石料理も発達しました。
現在では京料理は「おもてなしの心」を感じられる料理として、全国からその味を求めて観光客がやって来ます。
○京料理の特徴
京料理では、京野菜や乾物、大豆などを使った料理が多くあります。
また味付けはシンプルなものが多く、焼いたり蒸す、揚げる、生でそのまま、など本来の味を活かした料理です。
見た目はもちろん、季節によって盛り付けを変えたりするなど…味だけでなく五感で楽しむことができる料理であることが特徴といえます。
■京料理が発達したのには水が関係する
皆さんは「おいしい水」と言えば、どこが思い浮かぶでしょうか。
現在でこそ様々な場所でおいしい水を飲むことができますが、当時京都は豊かな水資源に恵まれており、冷たくて新鮮な水が湧いていました。
この地下水によって多くの京野菜が新鮮に育ち、そして料理にも活かされました。
京料理は京都府無形文化財にも指定されており、これからも様々な料理が生まれることでしょう。
■京料理で楽しめる京野菜と調味料
京料理には四季を感じる味が取り入れられています。それぞれ見てみましょう。
○春
春には特にワラビやゼンマイなどの山菜料理が旬を迎え、春らしい京料理を楽しむことができます。
またタケノコもこの時期で、様々な料理にになって登場します。
○夏
アユやハモなどが使われた料理が増えます。味噌を使った料理や天ぷらなど色んな味で食べることができます。
♦夏のピックアップ食材 万願寺とうがらし
「とうがらし」は多くの種類がありますが、京都府舞鶴市が発祥と言われるのが「万願寺とうがらし」です。名前を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
その見た目とは裏腹の味で、辛いものが苦手な方にも食べやすいとうがらしとして京都ではおばんざいなどに取り入れられ、幅広い年齢の方に愛されています。
万願寺とうがらしは大正時代に生まれた京野菜の1つで、京都府舞鶴市万願寺で誕生しました。伏見系のとうがらしとカリフォルニア・ワンダー系のとうがらしを交配してできたのが万願寺とうがらしです。
ナス科のトウガラシ属で、ししとうと同じで見分けにくいですが「大きさ」を見れば一目瞭然でしょう。
地元では万願寺甘とう、万願寺、とも呼ばれています。緑色でししとうのようなものや、収穫を遅らせた赤色の「赤万願寺」というものもあります。
万願寺とうがらしは年中食べることができますが、ハウスではなく自然の環境で育てるならば暑い季節、つまり5月上旬から9月中旬頃が旬になります。
「とうがらし」と言えば辛いイメージしかありませんよね。
辛いものが苦手な方はとうがらしは食べられないイメージが強いですが、万願寺とうがらしはとうがらしでも辛くないのが大きな特徴です。料理の色彩を豊かにし、身が肉厚でボリュームもあるので幅広い年齢の方が美味しく食べることができます。
■京都の「万願寺とうがらし」のレシピ
万願寺とうがらしは甘みとボリュームが魅力。
種は少ないので取り除かずに素焼きしたり、鰹節と醤油で和えたりするのもオススメ。また煮物や天ぷら、炒めものなど何にでも相性抜群ですから、是非使ってみてください。
ここでは、京都の「万願寺とうがらし」を使ったオススメレシピをご紹介します。
○万願寺とうがらしとじゃこの炒めもの
[必要なもの]
・万願寺とうがらし4本
・ちりめんじゃこ10g
・酒小さじ1
・ほんだし小さじ1/2
・みりん小さじ1/2
・しょうゆ小さじ1/2
・ごま油小さじ1/2
[手順]
1.万願寺とうがらしはヘタを切ります。種はお好みですが、食感が苦手な方は取り除きましょう。
2.万願寺とうがらしを1.5cmの斜め切りにします。
3.ごま油を入れたフライパンを熱して、ちりめんじゃこを炒めます。
4.色がついてきたら酒、ほんだし、みりん、醤油を加えて万願寺とうがらしを炒めます。
5.汁気がなくなれば完成です。
万願寺とうがらしとちりめんじゃこの相性は抜群。おつまみにもオススメの一品です。
万願寺とうがらしはまるごと炒めてしまうと味が染みにくいことと、破裂してしまう可能性があるので、そのまま加熱する場合は爪楊枝などで穴をあけましょう。
○万願寺とうがらしの煮浸し
[必要なもの]
・万願寺とうがらし6本
・ごま油大さじ1
・ほんだし5g
・だし醤油1/2
・みりん1/2
・料理酒1/2
・水150cc
・花かつお少々
[手順]
1.万願寺とうがらしのヘタをとって縦半分に切り、種を取ります。
2.鍋に万願寺とうがらしを入れて、ごま油で炒めます。
3.調味料を入れて沸騰させて煮ます。
4.お皿に入れ、花かつおをふりかければ完成です。
万願寺とうがらしは甘くて肉厚ですから、煮浸しでも美味しく頂けますよ。
○秋
秋といえば栗や松茸、子持ち鮎。紅葉をお皿に飾った、見た目も美しい料理が提供されます。
♦秋のピックアップ食材 京丹波黒枝豆
皆さんは京丹波で収穫される「京丹波黒枝豆」をご存知でしょうか。通常の緑色の枝豆よりも、色合いが黒っぽい枝豆なのが特徴。これは10月の豆がまだ黒色になる前に早採りしたもので、時期が遅くなると味や色合いも異なってくるんだとか。
見た目は普通の枝豆よりは黒っぽく、ほくほくとした食感が楽しめる「京丹波黒枝豆」。大粒で旨味たっぷりの黒枝豆として京丹波エリアでは有名になっています。その品質はかつて徳川家の献上品としても使われていたそうで、限られた期間にしか収穫ができないことから「幻の枝豆」と名高い逸品です。
また、栽培・管理が大変なことから「苦労豆」とも呼ばれており、712年頃の古事記や720年頃の日本書紀には五穀の1つとして数えられていたそうです。
健康や長寿を祈願して食べる黒豆煮は、おせち料理にも欠かせませんよね。
そもそも黒大豆は8月に花が咲き、9月に実が付きはじめ、10~11月頃の完熟前に収穫したものが黒枝豆となり市場に出回ります。
枝豆の栄養価、と聞いてもあまりイメージがわかないかもしれませんが、京丹波黒枝豆には
・ビタミンB1
・ビタミンB2
が豊富に入っており、食物繊維やアントシアニンという色素も含まれています。
アントシアニンはブルーベリーやナス、サツマイモの皮などにも入っており、この色素によって目の働きを高めたり、眼精疲労を予防する効果もあるそうです。
古来中国では黒豆が薬学書に載っており、
・腎臓の機能を高める
・解毒効果がある
・血液循環を良くする
などの効用があると言われてきました。
■京丹波黒枝豆のレシピ
京丹波黒枝豆は、その味をダイレクトに楽しめるものから和の料理まで幅広いレシピに活用することができます。
ここでは、人気のある京丹波黒枝豆レシピをいくつか見てみましょう。
○黒枝豆の天ぷら
【準備するもの】
・さつまいも1個
・京丹波黒枝豆150g
・塩少々
・天ぷら粉適量
・水適量
・油適量
①京丹波黒枝豆を茹で、皮をむきます。
②さつまいもを小さくブロック状に切ります。
③枝豆とさつまいもをボウルに入れ、天ぷら粉と水、塩を加えます。
④160度程度にした油に入れて、揚げましょう。
⑤天つゆまたは塩をふりかけたら完成です。
○焼きえだ
【準備するもの】
・京丹波黒枝豆200g
・塩適量
・水50ml
①京丹波黒枝豆の両端を切っておきます。
②ボウルに切った枝豆を入れて、水洗いをしてうぶ毛を落とします。
③水気を切ったらフライパンへ入れ、塩と水50mlを加えます。
④フライパンに蓋をして強火にし、沸騰させます。
⑤沸騰したら火を弱め、焼色が付けば完成です。
○雑穀米の京丹波黒枝豆ご飯
【準備するもの】
・京丹波黒枝豆200g
・水適量
・塩適量
・米適量
・雑穀米適量
①京丹波黒枝豆を水で洗い、塩もみします。さやの両端を切り落とします。
②鍋にお湯を沸かして京丹波黒枝豆と塩を入れ、茹でます。
③3分経過したら取り出して水気を切り、京丹波黒枝豆を取り出します。
④米を洗ってザルにあげます。
⑤雑穀米と米に水を入れておきます。
⑥30分ほど経過したら塩を入れて混ぜ、京丹波黒枝豆を入れて火にかけます。
⑦沸騰したら弱火にして炊きましょう。蒸らしてしゃもじでほぐせる程度になれば完成です。
○冬
聖護院だいこん、九条ねぎ、堀川ごぼう、壬生菜など多くの京野菜が旬を迎えます。
またフグやカニを使った料理も鍋や雑炊で楽しめば、体の芯から温まりますよ。
○調味料
食材のみならず、調味料にも京都ならではの特徴のあるものが存在します。
♦西京味噌
日本の和食の調味料と言えば「味噌」。大豆や米、麦などの穀物に麹と塩を入れて発酵させる調味料で、日本の伝統的な調味料ですよね。
味噌は地域によって種類があり、赤味噌や白味噌が有名です。その中でも京都では「西京味噌」という味噌があります。
200年前に京都で誕生した「西京味噌」。丹波屋茂助という丹波杜氏が禁裏御所(現在の京都御所)のご用命を受けて、宮中の料理味噌を吟醸して献上した味噌が西京味噌の始まりです。
もともと京都は海からも離れており、魚を新鮮に保つことが難しかったために味噌漬けにしました。そして京料理を追及した料理人らが素材の旨味を引き出すために漬けるようになりました。
西京味噌の名前の由来は、明治維新によって江戸に都が遷都されて「東京」となり、それに対して京都が西の都である京都を「西京」と呼んだことからなんだそう。
西京味噌は宮廷文化で育まれており、甘味と美しさを活かすために低塩分味噌を短期熟成で仕込んでいくのが大きな特徴。
これにより関東のしょっぱさのある白味噌とは異なる甘口に仕上がっています。味噌汁に不向きな印象ですが、しっかりとした香りでその甘味を効かせた味噌汁もまた美味しいですよ。
また西京味噌は米麹が多く使われており、物によっては水飴も配合されているものも。甘味が強く、塩分は通常の白味噌のなんと半分以下。
低塩分な西京味噌は白っぽい色も特徴的。成熟期間が短いことでより白っぽく仕上がるのです。
では、見た目もそっくりな西京味噌と白味噌にはどのような違いがあるのでしょうか。
その結論としては製造方法に変わりはなく、特徴も同じ味噌です。
つまり、西京味噌と白味噌は同じ味噌なのです。
ですが、西京味噌と言えるのは京都府味噌協同組合で認められた基準を満たすものが条件でどの白味噌でも「西京味噌」と記載できるわけではありません。
西京味噌と記載ができる条件は以下の通りになっています。
・組合に所属している
・組合の認定する材料を使っており、京都府内で製造している
・組合の認定を受けた甘口で低塩分の味噌
・京都府内創業50年以上または、味噌技能士1級以上の技術者が在職するまたは、全国味噌協同組合連合会主催の鑑評会で表彰したまたは同等の製造技術があること
という基準を満たした味噌のみが、西京味噌なのです。
♦出汁
京料理に使われるのはまず昆布出汁が基本。そこにかつお節やさば節、用途によってはまぐろ節など料理に合わせて一番出汁が使用されます。これらが美味しい京都の水と合わさることで、料理の味に深みをもたらすベースとなるのです。
■お出汁を手に入れるなら「京都離宮」
そんな京料理に欠かせない出汁を手に入れれば、京都の味も手軽にお家で再現できるはず!ここではお出汁のテーマパークとして話題の「京都離宮」についてご紹介します。
京都伏見にある「おだしとだしまき専門店」の「京都離宮」は、2022年7月にオープンした新しいお店で、近頃多くのメディアでも取り上げられています。
歴史ある日本家屋を改装した立派な建物で、こだわり抜いたおだしを頂くことができ、予約困難なランチも人気なんです。
ここはお出汁の魅力や歴史、文化などを伝えたいという想いを届ける場所だそうで、美しい日本庭園などもあり、京都らしさを感じられます。
さらに、お出汁がショーケースに展示されていたり、実際に素材に触れることができたりなど、お出汁の魅力を知るのに絶好の場所といえるでしょう。
「五感で楽しめる」がコンセプトでおだしのテーマパークを謳うこのお店、具体的にどのような取り組みをおこなっているかというと…
○離宮のこだわり抜いたおだし
こちらのお出汁は全て国産の最高級の天然素材が使われています。
化学調味料、添加物、保存料は使っていないので小さい子供やご高齢の方などでも安心して食べられそうです。
本物の素材を使ったお出汁を味わいたい方にはオススメ。
○まずはおだしを楽しむ
ここに来たらまずは、お出汁を楽しみましょう。ここでは、だしまきを作る料理人の姿を見ることができます。ジュ〜という音や香りも楽しめ、臨場感たっぷり。
○お出汁について知る
お出汁はただ食べるだけではありません。歴史や材料について、ギャラリーで学ぶことができます。
素材を手に取ってみたり試飲もできたりするので、どんどん興味がわいてきますよ。
○お出汁を食べてみる
飲食エリアではだし巻きなどの料理を頂けます。ここのだし巻きは異なる4種類のお出汁を使ったものから選ぶことができるのが最大の特徴。
というのも、「お出汁の種類別で味わえるだし巻き」は日本初なんだそうで、お出汁の味を比べながら美味しいだし巻きを堪能できます。自分好みの味がきっと見つかりますよ。
〆には出汁茶漬けも。炊きたてご飯とお出汁の味わいのコラボが堪りません!
○お出汁を購入する
お出汁はもちろん購入することもできます。お土産にも最適なので、贈る相手に合わせて吟味しましょう。だし巻きと一緒になったお弁当やお寿司などもあり、見た目も美しくインパクト抜群。もちろんこだわりのお出汁が使用されていますし、化粧箱に入っているので手土産にも良いですね。
施設名:京都離宮
HP:https://kyotorikyu.com/
住所:京都府京都市伏見区中島鳥羽離宮町45
アクセス:京都市営地下鉄烏丸線「竹田駅西口」より車で5分程度
■まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は、京料理の魅力について食材なども合わせてご紹介いたしました。
京都は水資源に恵まれていたこともあり、長い月日をかけて京料理を発展させていきました。
特に京野菜は四季それぞれに旬を迎えるものも多くありますので、観光した時期のものを是非味わっててみてくださいね。